「大いなる何かが自分を育てようとしている。そして、その自分を通じて素晴らしい何かを成し遂げようとしている」と、思い定めること。

もし、この覚悟を定めることができるならば、我々はことばの真の意味での「強さ」を身につけることができる。なぜなら、この覚悟を定めた人間は、人生において、どのような逆境が与えられても、その逆境を「大いなる何かが自分を育てるために与えたもの。自分を成長させるために与えたもの」と前向きに受け止め、その逆境を糧として成長しようとすることができるからである。

我々の人生に与えられる苦労や困難、失敗や敗北、挫折や喪失、病気や事故、といったさまざまな逆境は、一見、ネガティブな出来事に思われるが、実は、逆境とは「成長の最高の機会」であり「脱皮と飛躍の好機」でもある。それゆえ、そのことに気がついたとき、人生で与えられる逆境とは、ある意味で、極めてポジティブな出来事であることに気がつく。

実際、あなたはいつ成長しただろうか? それは順風満帆のとき、好調や幸運が続いたときではないだろう。それは、逆境のときではなかったか? 夜も眠れぬ日々、ため息が出る日々、胃が痛むような日々。そうした苦しい日々を、それでも前を向いて歩み続けたとき、気がつけば、大きく成長した自分がいたのではないか。

逆境とは、まさに「成長の最高の機会」「脱皮と飛躍の好機」。ためらうことなく、我々は、一つの覚悟を定めるべきであろう。いま、大いなる何かが自分を育てようとしている。この逆境を与えることによって、自分を成長させようとしている。そして、その成長した自分を通じて、素晴らしい何かを成し遂げさせようとしている。

そして、ひとたび、その覚悟を定めたならば、もはや、人生においてネガティブな出来事というものはなくなる。すべての出来事が、深い意味を持ったポジティブな出来事であることに気がつくだろう。

田坂広志「運気を磨く」2019光文社P.238-242