学校に対する批判として、しばしば耳にするのが、もっと楽しい授業にならないのかというものである。

その背景にあるのが、「授業が楽しくない」「授業がつまらない」といった子どもたちの声である。当然の流れとして、毎日通う学校で朝から夕方まで行われている授業がつまらないのでは、子どもたちがあまりにかわいそうだ、何とかして楽しい授業にすべきだということになる。

そうした保護者をはじめとする世論に動かされて、学校の教員たちは、子どもたちが楽しいと思える授業にすべく、さまざまな工夫を試みている。

教員向けの雑誌にも、楽しい授業づくりのためのヒントがちりばめられたり、その試みの事例が紹介されたりしている。

だが、「このようにしたら、子どもたちの楽しそうな笑顔が増えた」「こんな工夫をしたら、子どもたちが楽しいと言うようになった」などといった事例を紹介する記事を見るにつけ、「何か違うのではないか」といった思いを抱かざるを得ない。

果して、子どもたちが「授業が楽しくない」「授業がつまらない」ということへの対処として、子どもたちの楽しそうな笑顔を引き出すと言うことのみでいいのだろうか・・・

榎本博明「教育現場は困ってる」2020平凡社P.14-15